花火:30代男性の体験談
私が当時4~5歳くらいの頃、夏に体験した話です。
当時、私は東京都K区のK町の江戸川に近い所に住んでいました。
そこは戦後から数十年経っているのに開発があまり進んでいなくて
少し歩けば中草むらや空き地が多い殺風景な所でした。
そんな生活の中、1年の楽しみの1つが江戸川の花火大会でした。
私の住んでる家は2階建てで大きなベランダがあり、
花火大会の時はそこに茣蓙を敷いて家族みんなで花火を観て楽しんでいました。
不思議な体験をしたのはその花火大会の時です。
家族で毎年のように花火を観ていた時のこと、
不意に私は道を挟んだ向かいの家の窓に目を向けました。
すると、黒で長い髪で白い着物を着た若い女性が外を眺めていました。
向こうもこちらに気付いたのかふと私の方に顔を向けると、
ニコっと笑い返してくれました。
しかし、その女性の左の頬は太い針で穴を開けられたのかと思うくらい
大きな穴が幾つも空いていました。
当時、そんな姿を見ても怖いとも思いませんでしたが、
ホンの一瞬目をそらした瞬間、その女性はその場から居なくなっていました。
その時はきっと家の中に戻っていったのだろうとしか思っておらず、
そのまま花火を楽しんでいました。
そんな経験をしていた事をふと今年に入って思い出し、
6月に実家に帰った時に親に伝えた所、向かいに住んでいた人は
老夫婦が住んでいただけで若い女性なんて居なかったと言われました。
特に何か悪い事をされた訳でもなく、優しく笑っていた所を思い返すと、
ただ花火を観に来た幽霊だったのかもしれません。
なんで、幽霊だって言い切れるのかって、
それは白い着物が死に装束だったからです。